
木を、二年寝かせる
椀と鉢には欅(けやき)と栃(とち)、盆や箱物には朴(ほお)と桂(かつら)を使っています。いずれも国内で伐られたものです。伐り出した木はすぐには挽けません。荒く挽いて形をつけたあと、風の通る棚で一年から二年、ゆっくり水分を抜きます。ここを急ぐと、器が完成してから歪みます。私たちが注文をいただいてから半年以上お待たせすることがあるのは、この時間を縮められないためです。

漆という樹液
漆は、ウルシの木の幹に傷をつけて採る樹液です。一本の木から一年に採れるのは牛乳瓶一本にも満たない量で、採り終えた木は伐られます。国内で漆を採る職人は高齢化により年々減っており、国産の漆は貴重なものになりました。私たちは仕上げの上塗りに国産の漆を、下地と中塗りには国内で精製された漆を使い分けています。どの器にどちらを使っているかは、お求めの際にお伝えしています。

布と、焼いた土
木地の縁や高台といった欠けやすい場所には、麻の布を漆で貼ります。布着せと呼ぶ工程です。その上に、焼いた珪藻土の粉を漆と米糊で練ったものを何層も重ねます。これが下地です。表からは一切見えず、完成した器の美しさには直接関係しません。しかし塗膜が擦り減ったとき、この層があるかないかで、直せる器か直せない器かが分かれます。

使うほどに変わります
漆の膜は、時間とともに透明度が増していきます。塗り立ての黒はやや白濁して見えますが、数年使うと底が深くなり、下に置いた朱や金の色が浮き上がってきます。手が触れる縁のあたりから先に艶が出て、その器を誰がどう使ってきたかが表面に残ります。これは劣化ではなく、漆器が本来たどる変化です。買った日がいちばん美しい器ではありません。
成分と安全性について
器に使用しているのは木材、漆、麻布、珪藻土、米糊、そして加飾に用いる金粉・銀粉・貝です。合成樹脂や合成塗料は使用していません。完全に硬化した漆の膜は食品に触れて問題ありませんが、硬化前の漆に触れるとかぶれることがあります。出荷する器はすべて硬化を確認したものです。過去に漆や樹液でかぶれた経験のある方は、事前にご相談ください。木材の産地と樹種、漆の産地は、ご希望があれば個体ごとに書面でお出しします。
