
十二人でつくっています
工房にいるのは、木地師が三名、下地と塗りが五名、加飾が二名、修理が一名、そして写真と海外対応が一名です。全員がこの棟のなかで働いていて、朝は同じ土間で顔を合わせます。工程を分けて外へ出さないのは、器の設計を途中で誰かに預けないためです。

木地 — 三十年、轆轤の前に
木地を挽く職人の一人は、この工房で三十年になります。彼が言うには、木は一本ずつ性格が違い、同じ寸法で挽いても縮み方が違う。だから乾かす棚のどこに置いたかを全部覚えているそうです。若い木地師が二人入り、いまは加飾挽きの筋の入れ方を教えている最中です。この技術だけは、口では伝わりません。

下地と塗り — 見えない層をつくる
下地の職人は、自分の仕事が完成品の表からは一切見えないことを承知しています。それでも研ぎに手を抜かないのは、二十年後に塗り直しで戻ってきた器を開いたとき、誰の下地かが分かってしまうからだと言います。塗りの職人は五名のうち三名が女性で、上塗りは湿度の読みが要るため、季節ごとに担当を替えています。

加飾 — 図案から描く
蒔絵と沈金を担当する二名は、既成の図案を使いません。器の形が上がってきてから、その曲面に合わせて下絵を描きます。海外のお客さまからは、伝統的な松竹梅ではなく、その方の暮らす土地の植物を入れてほしいという依頼が増えました。図案を起こす段階で写真を送っていただき、何度かやりとりをしてから彫り始めます。
修理 — 他所の器も預かる
修理担当は、もとは別の産地で塗師をしていた職人です。持ち込まれる器の多くは、どこで誰がつくったか分からないものです。開けてみると下地の作り方でおおよその産地が分かり、当時の職人がどこに手をかけたかが読める。「その人の仕事を消さないように直す」というのが、彼の言い方です。
海外対応
問い合わせの英文と写真を担当する者が一名います。工房で撮影し、素材や工程についての質問には職人に確認したうえで返します。専門的な内容を外部に投げないのは、翻訳の途中で説明が丸くなってしまうからです。ドイツ語とフランス語のお問い合わせは、英語でのやりとりをお願いしています。
